この記事のポイント
- 日刊工業新聞によると、神奈川県は2026年度当初予算で「宇宙関連産業の振興」に4億990万円を計上し、前年度比約2.8倍の大幅増額を実現
- JAXA相模原キャンパスや三菱電機鎌倉製作所など既存の宇宙関連企業・研究機関との連携を活用した産業クラスター(関連企業や研究機関が地理的に集積し、相互連携を行う産業集積地)形成を推進
- 交流拠点整備、衛星データ活用支援、宇宙サミット開催、人材育成の4つの柱で県内企業の宇宙分野参入を促進
神奈川県の宇宙産業政策とは?基本構想と目標
4億円超の予算投入で加速する神奈川県の宇宙産業振興が注目を集めています。神奈川県は2025年度から宇宙産業の産業政策として宇宙関連産業振興に本格的に取り組んでいます。日刊工業新聞の報道によると、2026年度当初予算では「宇宙関連産業の振興」に4億990万円を計上し、前年度比約2.8倍と大幅に増額しました。
この産業政策は県内の宇宙関連産業クラスター形成強化を目的としています。総合的な機運醸成、企業間連携強化、研究開発支援、人材育成を推進する包括的な取り組みとして展開されています。

「かながわ宇宙産業振興構想」の概要
神奈川県の宇宙産業振興は、既存の産業基盤を活用した戦略的アプローチが特徴です。SPACE Mediaの取材記事によると、県内には製造業が集積し、人工衛星や搭載機器の開発を手がける三菱電機鎌倉製作所、JAXA宇宙科学研究所といった宇宙関連企業・研究機関がすでに立地しています。
神奈川県産業振興課は、SPACE Mediaによると、2013年からロボット産業などの先端分野を振興対象としており、宇宙産業もその延長線上に位置づけています。
2030年までの数値目標と戦略
具体的な数値目標について、国の宇宙基本計画との連携を重視しています。内閣府宇宙政策がまとめる宇宙基本計画(令和5年6月閣議決定)によると、2020年に4.0兆円となっている市場規模を2030年代の早期に2倍の8.0兆円に拡大する目標を掲げています。
神奈川県はこの国家目標の実現に向けて、県内企業の宇宙分野参入促進と既存企業の共創を通じたクラスター形成を戦略の中核に据えています。2025年12月23日に開設した「KANAGAWA Space Village」を拠点として、企業間連携の促進を図っています。
なぜ神奈川県が宇宙産業に注力するのか?背景と狙い
神奈川県が宇宙産業振興に取り組む背景には、世界的な産業構造変化と国の政策動向があります。国の政策動向としては、日本政府の宇宙戦略基金による長期支援の開始や、宇宙基本計画での市場拡大方針が挙げられます。

県内製造業の技術基盤と宇宙産業の親和性
京浜工業地帯の一角を占める神奈川県は、ものづくり企業の集積地として長い歴史を持ちます。特に精密機械、電子部品、材料技術などの分野で高い技術力を有する企業が多数立地しています。
これらの技術は宇宙産業との親和性が高く、人工衛星の部品製造や地上設備の開発などで活用可能です。県内企業にとって宇宙分野への参入は、既存技術の新たな応用先として魅力的な選択肢となっています。
また、SPACE Mediaによると、川崎市の「ライフイノベーションセンター」や藤沢市の「湘南ヘルスイノベーションパーク」など、医療・ヘルスケア関連企業の集積も特徴的です。宇宙環境での医療技術開発や創薬研究など、異分野融合による新たなビジネス機会の創出も期待されています。
国の宇宙基本計画との連携効果
内閣府宇宙基本計画では、宇宙産業の市場規模を2030年代早期に8兆円に拡大する目標を設定しています。神奈川県は、こうした国の方針も踏まえて宇宙産業に取り組むことにしたと説明しています(SPACE Mediaの取材記事)。
衛星データの利活用の促進では、地域の課題に近い自治体も役割を担えます。神奈川県は衛星データビジネス利用促進事業を通じて、農業やインフラ点検などの分野での活用事例創出に取り組んでいます。
具体的な支援策と取り組み内容
神奈川県の宇宙産業振興は4つの主要施策で構成されています。初年度の2025年度は、交流拠点整備、衛星データ活用支援、産業参入促進、広報事業の各分野で取り組みを始めました。2026年度は、振動試験設備の整備や人材の確保・育成も加わります。

県内企業の宇宙分野参入支援プログラム
宇宙関連産業参入促進事業では、成長産業である宇宙分野への参入促進と共創の場を提供しています。機密性が高い宇宙関連産業の特性を踏まえ、企業間の信頼関係構築から実際のビジネスマッチングまでを段階的に支援する仕組みを整備しました。
神奈川県によると、2026年2月5日にアニヴェルセル みなとみらい横浜で開催された「神奈川宇宙サミット2026」は、首都圏自治体初の大規模宇宙ビジネスカンファレンスとして位置づけられています。衛星やものづくり分野を含む幅広いテーマのセッションを用意し、宇宙産業への参入を考える事業者を主な対象としています。
特に、医療・創薬など異分野からの宇宙領域参入を意識したセッションも企画されており、県内の医療・ヘルスケア関連企業の集積を活かした取り組みとなっています。
研究開発拠点の整備と産学連携
神奈川県によると、2025年12月23日にJR橋本駅近くに開設された「KANAGAWA Space Village」は、宇宙関連企業向けの交流拠点として機能しています。宇宙関連企業、自治体、研究機関、金融機関等の連携促進を目的としたコワーキング機能を備えています。
この拠点では、県内での宇宙関連コミュニティの形成から実際のものづくりに向けた連携まで展開することを目指しています。また、少し離れた場所にある「さがみはら産業創造センター」では、簡易的な作業ができるラボ機能も提供しています。
神奈川県・相模原市・JAXAの3者連携協定により、JAXA宇宙科学研究所の知見やノウハウを活用した産学連携体制も構築されています。この協定では、県内企業の宇宙関連産業への参入促進や企業誘致、起業支援などに3者が連携して取り組むことが合意されています。
人材育成・教育プログラムの展開
宇宙関連産業広報事業では、宇宙を身近に感じてもらい、宇宙に関する仕事や産業の将来性を理解してもらうことで、必要な人材の育成に寄与することを目的としています。
神奈川県宇宙応援アンバサダーに就任した「宇宙なんちゃら こてつくん」を活用した広報・啓発活動も展開しています。キャラクターを通じた親しみやすいアプローチで、特に若年層の宇宙産業への関心喚起を図っています。
また、JAXA相模原キャンパス展示施設の利活用や県内イベントでの協力、ロケット打上げや探査ミッションの中継パブリックビューイング等により、県民の宇宙に対する意識醸成を推進しています。2026年度は、業界で求められるスキルを整理した「宇宙スキル標準」を使ったセミナーや、学生などを対象にした出張講座も予定されています(県の令和8年度当初予算案の概要)。

どの企業が参画している?県内の宇宙関連企業動向
神奈川県内の宇宙関連企業は、大手から中小企業まで幅広い層が参画しています。既存の製造業基盤を活用した参入パターンが多く見られます。
大手企業の宇宙事業展開状況
三菱電機鎌倉製作所は県内の代表的な宇宙関連企業として、人工衛星や搭載機器の開発を手がけています。同社は長年にわたって宇宙分野での技術蓄積を重ねており、県の宇宙産業振興においても中核的な役割を担っています。
県の有識者会議では、人工衛星の製造や関連技術を担う企業が県内に集まっていること(衛星分野の製造業の集積)が強みとして評価されています(SPACE Mediaの取材記事)。
中小企業の新規参入事例
県内の中小企業も宇宙分野への関心を高めています。精密機械加工、電子部品製造、材料開発などの分野で高い技術力を持つ企業が、宇宙産業への新規参入を検討しています。
「KANAGAWA Space Village」では、こうした中小企業と宇宙関連企業との出会いの場を提供しています。コワーキングスペースでの交流を通じて、技術のシーズとニーズを結びつけることを目指しています。
神奈川県によると、衛星データビジネス利用促進事業では、現在3案件が採択されており、農業、インフラ点検などの分野で県内企業が衛星データ活用プロジェクトに取り組んでいます。宇宙ビジネスの専門家による助言やプロジェクト進行管理などの伴走支援を受けながら、ユースケースの創出を目指しています。

他自治体との比較:神奈川県宇宙産業政策の独自性
神奈川県の宇宙産業政策は、既存産業基盤との融合と首都圏の立地優位性を活かした独自のアプローチが特徴です。他の自治体の取り組みと比較して際立つ特色があります。
神奈川県独自の支援制度の特徴
神奈川県の支援制度は、医療・ライフサイエンス分野との融合に重点を置いている点が独特です。川崎市の「ライフイノベーションセンター」や藤沢市の「湘南ヘルスイノベーションパーク」を活用しています。国際宇宙ステーションでは再生医療や創薬に関わる実験が行われており、県はこうした医療・創薬の集積を宇宙産業とつなげることを特色としています(SPACE Mediaの取材記事)。
また、首都圏という地理的優位性を活かして、幅広い参加者を集める大規模なビジネスカンファレンスを開催している点も特徴的です。「神奈川宇宙サミット」は首都圏自治体初の大規模宇宙ビジネスカンファレンスとして位置づけられています。
交流拠点「KANAGAWA Space Village」では、単なるコワーキングスペースにとどまらず、「さがみはら産業創造センター」でのラボ機能提供まで含めた包括的な支援体制を構築しています。
他県の宇宙産業政策との比較
宇宙港やものづくり、宇宙技術を使った課題解決など、自治体の取り組みの切り口はさまざまです。その中で神奈川県は、衛星分野の製造業やライフサイエンス分野の集積を生かしたクラスターの形成を目指しています。
県はロボット産業など先端分野の振興に2013年から取り組んでおり、宇宙産業もその延長線上に位置づけています。
JAXA宇宙科学研究所が県内(相模原市)に立地していることも強みです。3者連携協定により、この優位性を最大限活用した産学連携体制を構築しています。

今後の課題と展望
神奈川県の宇宙産業振興は2025年度に開始されたばかりで、今後の発展には解決すべき課題もあります。
人材確保と技術開発の課題
宇宙産業の発展には高度な専門人材の確保が不可欠ですが、人材不足が課題として挙げられています。特に、宇宙システム工学、衛星データ解析、宇宙環境技術などの専門分野での人材育成が急務となっています。
また、宇宙産業特有の厳格な品質要求や試験設備の不足も課題です。宇宙環境での動作確認には振動・放射線・熱真空などの特殊な試験が必要で、そうした環境が足りないという声があります(SPACE Mediaの取材記事)。県は2026年度の予算で、衛星の開発などに必要な振動試験設備を新たに整備するとしています。
衛星データ利活用プロジェクトは現在3案件のみで、今後の拡大状況を注視する必要があります。より多くの企業が参画できるよう、支援制度の拡充や成功事例の横展開が重要になります。
2027年以降の政策発展方向
県は2026年度の予算で、振動試験設備の整備や人材の確保・育成など新しい取り組みを加えました。また、相模原市の橋本地域にリニア中央新幹線の新駅が設置される予定であることも、交通の便を含めた立地の強みに挙げられています(SPACE Mediaの取材記事)。
国の宇宙戦略基金などの支援制度を、県内企業がどう生かしていくかも今後の注目点です。
医療・創薬分野との融合が、どのような事業につながっていくかも注目されます。

よくある質問
Q. 神奈川県の宇宙産業振興予算はどのくらいですか?
A. 日刊工業新聞によると、神奈川県は2026年度当初予算では4億990万円を計上しており、前年度比約2.8倍の大幅増額となっています。県の「令和8年度当初予算案の概要」では、宇宙サミットの開催と展示会への出展支援、「KANAGAWA Space Village」の運営と衛星の開発などに必要な振動試験設備の新設、衛星データの事業化支援、「宇宙スキル標準」を使ったセミナーなどの人材の確保・育成、キャラクターを使った広報などに充てるとされています。
Q. KANAGAWA Space Villageではどのようなサービスを受けられますか?
A. 2025年12月23日にJR橋本駅近くに開設されたコワーキングスペースで、宇宙関連企業、自治体、研究機関、金融機関等の連携促進を目的としています。また、「さがみはら産業創造センター」では簡易的な作業ができるラボ機能も提供しています。県内での宇宙関連コミュニティの形成から実際のものづくりに向けた連携まで展開し、企業間のビジネスマッチングや技術シーズとニーズのマッチングを支援します。
Q. 県内企業が宇宙産業に参入するための支援制度はありますか?
A. 衛星データ利活用プロジェクト支援事業では、専門家による助言やプロジェクト進行管理などの伴走支援を提供しています。また、神奈川宇宙サミットなどのイベントを通じて、ビジネスマッチングの機会も提供しています。また、神奈川県・相模原市・JAXAは2025年8月に連携協定を結び、県内企業の宇宙関連産業への参入や企業誘致、起業の支援などに連携して取り組むとしています。
Q. 他の自治体の宇宙産業政策と何が違うのですか?
A. 神奈川県は医療・ライフサイエンス分野との融合に重点を置いている点が特徴です。既存の製造業基盤とJAXA宇宙科学研究所の立地という優位性を活かした総合的なクラスター形成を目指しています。取材記事では、ライフサイエンス分野を視野に入れた宇宙産業の振興は多くなく、県の特色が強い領域だとされています。首都圏に近い立地も強みに挙げられています。
Q. 宇宙産業振興の成果はいつ頃見えてきますか?
A. 2025年度に開始されたばかりの施策のため、具体的な成果の検証には時間が必要です。成果がいつ、どのような形で示されるかは、県の公表を確かめる必要があります。
まとめ
神奈川県の宇宙産業政策は、既存の製造業基盤とJAXA宇宙科学研究所の立地という優位性を活かした戦略的な取り組みです。2026年度予算4億990万円の大幅増額により、交流拠点整備、衛星データ活用支援、産業参入促進、人材育成の4つの柱で県内企業の宇宙分野参入を促進しています。
特に、医療・ライフサイエンス分野との融合という独自のアプローチは、他自治体との差別化要因となっています。「KANAGAWA Space Village」を拠点とした企業間連携の促進や、首都圏初の大規模宇宙ビジネスカンファレンス「神奈川宇宙サミット」の開催など、具体的な施策も着実に進行しています。
今後は人材確保と試験設備整備という課題の解決が重要になります。2026年度に始まる振動試験設備の整備や人材育成が、県内企業の参入にどうつながるかが注目されます。県内企業にとって、宇宙産業は新たな成長機会として大きな可能性を秘めています。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
最終更新: 2026年9月29日
参考サイト
- 令和8年度当初予算案等の概要 – 神奈川県ホームページ
- 宇宙関連産業の振興 – 神奈川県ホームページ
- 【相模原市】神奈川県の宇宙関連産業の振興に関する連携と協力に関する協定書を締結
- 宇宙政策 – 内閣府
- 衛星製造、ライフサイエンス… 県の強みを深め、活かす ―宇宙領域に新規参入・神奈川県
- 2026自治体 産業政策の目玉(1)神奈川県 宇宙関連産業の振興強化
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