次期学習指導要領に向けた検討が進んでいます。文部科学大臣は2024年12月25日に中央教育審議会へ諮問し、2025年9月25日には教育課程企画特別部会が論点整理をまとめました。論点整理では、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を加えること、中学校で技術・家庭科から分けて「情報・技術科(仮称)」を設けることなどが示されています。
小学校に「情報」という独立した教科が新しくできるわけではありません。答申は2026年度中のとりまとめが目指されており、2026年9月時点ではまだ出ていません。Wing(2006)が、読み・書き・算数に加えて計算論的思考をすべての子どもの基礎的な力にすべきだと論じて以降、世界各国で情報教育を学校教育に取り入れる動きが広がっています。
この記事では、論点整理で示された方向性と現行との違い、今後のスケジュール、保護者と教員が今から備えられることを順に解説します。
この記事のポイント
- 現行指導要領では「情報活用能力」は各教科を横断して育てる扱いだが、次期改訂に向けた論点整理では小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を加える方向が示されている
- 中央教育審議会は2024年12月に次期学習指導要領に向けた諮問を受け、2025年9月に論点整理をまとめており、2026年現在も答申に向けた審議が続いている
- 保護者は家庭でのデジタル体験の土台づくりを、教員は情報教育の専門的知識(TPACK)の習得を今から始めることが求められる
次期学習指導要領で情報教育はどう変わる?
まず、現行の学習指導要領での情報教育の位置づけと、論点整理で示された方向性を整理します。

現行指導要領における情報教育の位置づけ
2017年告示の現行小学校学習指導要領では、「情報活用能力」は言語能力・問題発見・解決能力と並ぶ「学習の基盤となる資質・能力」として定義されています。文部科学省の学習指導要領関連ページによると、情報活用能力は国語・算数・理科・社会など既存の各教科を通じて横断的に育成するものとされており、「情報」という独立した教科は小学校段階に存在しません。
一方、2020年度からは小学校でのプログラミング教育が必修化されました。ただしこれも独立した授業時間を持つ教科ではなく、算数・理科・総合的な学習の時間などに「組み込む」形での実施が求められています。つまり現行制度では、情報教育は「教科横断的な扱い」に留まっており、系統的・体系的なカリキュラムが組みにくい構造になっています。
Grover&Pea(2013)は、計算論的思考を、問題の分解やアルゴリズム的な考え方、抽象化などを含む考え方の集まりとして整理しています。
論点整理で示された方向性
中央教育審議会の教育課程企画特別部会は、2025年9月25日に次期学習指導要領に向けた論点整理をまとめました。情報教育については、小学校では総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を加え、中学校では技術・家庭科から分けて「情報・技術科(仮称)」を新設し、高校では情報科を充実させる方向が示されています。
背景には、2022年以降の生成AIの急速な普及や、GIGAスクール構想による1人1台端末の整備があり、情報を活用する力を系統的に育てる必要性が高まっています。

現行と次期指導要領の違いはどこにある?
現行制度と、論点整理で示された次期の方向性の違いを整理します。
小学校・中学校・高校で何が変わるのか
現行の学習指導要領では、情報活用能力は各教科を通じて育てるものとされています。論点整理では、学校段階ごとに情報教育を学ぶ場をはっきりさせる方向が示されました。
| 学校段階 | 現行(小中は2017年、高校は2018年告示) | 次期(2025年9月の論点整理) |
|---|---|---|
| 小学校 | 各教科を通じて横断的に育成。プログラミング教育は2020年度から必修(教科に組み込む形) | 総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を加える(独立した教科ではない) |
| 中学校 | 技術・家庭科(技術分野)で情報の技術を学ぶ | 技術・家庭科から分けて「情報・技術科(仮称)」を新設 |
| 高等学校 | 共通必履修科目「情報Ⅰ」(2022年度から) | 情報科の充実 |
小学校では独立した教科が新しくできるのではなく、総合的な学習の時間の中に情報を学ぶ領域を設ける形です。具体的な学習内容や授業時数は、答申と告示を経て決まります。

調整授業時数制度とは?
新しい内容を加えるには、既存の授業時間をどう調整するかという問題が避けられません。
論点整理では、学校が地域や児童生徒の実態に応じて各教科の授業時数を一定の範囲で調整できる「調整授業時数制度」も示されています。具体的な時数の配分は答申と告示の段階で決まるため、2026年9月時点ではまだ検討中です。
次期学習指導要領が目指す方向性
論点整理では、次期改訂の方向性として「Excellence」「Equity」「Feasibility」の3つが掲げられています。情報教育の見直しも、こうした全体の方向性の中で検討されています。

資質・能力ベースのカリキュラム設計
次期学習指導要領でも「資質・能力の三つの柱」(知識・技能/思考力・判断力・表現力/学びに向かう力・人間性)は継承される方向です。現行指導要領で採用されたこの枠組みをさらに深化させ、「何を知っているか」だけでなく「何ができるか」「どう社会に関わるか」を問うカリキュラム設計が目指されています。
情報教育との関係でいえば、「情報活用能力」を単なるデジタル操作スキルとして捉えるのではなく、問題を発見し・情報を収集・整理・分析し・解決策を発信するという一連のプロセスを「思考力・判断力・表現力」として位置づける方向性が示されています。Wing(2006)が提唱した計算論的思考の概念と重なる部分が大きく、国際的な教育改革の潮流とも整合しています。
デジタル・AI時代を見据えた学びの再構築
次期改訂の特徴のひとつは、生成AIの登場を正面から受け止めた学びの再設計です。中教審の審議では、AIに代替されにくい力——批判的思考・創造性・コミュニケーション・倫理的判断——を育てることが議論されています。
たとえば、次のような力が関わってきます(具体的な内容は答申と告示で決まります)。
- 情報の真偽を見極めるメディアリテラシーの育成:フェイクニュースや誤情報が氾濫する環境で、一次情報を確認する習慣を小学校段階から育てる
- データリテラシーの基礎:グラフや統計を読み解く力を、算数・社会と連携しながら、情報を学ぶ場(小学校では総合的な学習の時間の「情報の領域(仮称)」)で扱う
- AIの仕組みへの基礎的理解:AIが「なぜそう判断するか」を概念的に理解し、道具として適切に使う態度を形成する

全面実施はいつから?今後のスケジュールは?
保護者・教員にとって最も気になるのは「いつから変わるのか」という点でしょう。2026年現在の進捗と今後の見通しを整理します。
2026年現在の改訂審議の進捗
文部科学省・中央教育審議会は2024年12月に文部科学大臣から次期学習指導要領に向けた諮問を受け、2025年9月25日には教育課程企画特別部会が論点整理をまとめるなど、2026年度中の答申の取りまとめを目指して審議を進めています。
ただし、2026年9月時点では答申も告示もまだ出ていません。現行の学習指導要領では、答申(2016年12月)から告示(2017年3月)まで約3か月で、移行期間を経て小学校の全面実施は2020年度でした。
小学校の情報教育の扱いが正式に決まる時期や全面実施の年度は、文部科学省の公式サイトで最新情報を確認してください。
移行期間・周知期間の見通し
学習指導要領の改訂では通常、「告示→移行期間→全面実施」という段階を踏みます。移行期間中は新しい内容を先行して実施することが認められ、学校現場が準備を整える時間が設けられます。
次期改訂における移行期間・周知期間の具体的なスケジュールは、2026年9月時点では正式に発表されていません。過去の改訂では移行期間が1〜2年設けられた例もあり、全面実施は告示から数年後になる見込みです。
⚠️ 注意:スケジュールは変動する可能性があります
次期学習指導要領の告示時期・移行期間・全面実施年度は、2026年9月現在も審議・調整が続いています。具体的な日程は文部科学省公式サイトおよび中央教育審議会の審議経過で随時確認してください。

保護者と教員はどう備えればいい?
情報教育の見直しが進む中、家庭と学校現場それぞれが今から取り組めることを具体的に紹介します。
家庭でできる情報活用能力の土台づくり
情報活用能力の土台は、学校の授業が始まる前から家庭でも育てられます。
保護者が家庭でできる具体的な取り組みは次の通りです。
- Scratchでの創作体験:MITメディアラボが開発した無料ビジュアルプログラミング環境「Scratch」は、小学生が自分でゲームやアニメーションを作れるツールです。コードを「ブロック」として組み合わせる操作で、プログラミング的思考の基礎が自然に身につきます
- 情報の真偽を一緒に確認する習慣:「このニュースは本当?」「どこで確認できる?」と親子で一次情報を探す習慣が、メディアリテラシーの素地になります
- データを読む練習:天気予報のグラフ・スポーツの成績表・家計簿など身近なデータを「どう読むか」を話し合うだけで、データリテラシーの入口になります
- デジタル機器の使い方のルールを話し合う:使用時間・使用場所・個人情報の扱いについて家族でルールを決めることは、情報モラル教育の実践そのものです
難しく考える必要はありません。日常の中で「情報を疑い、確かめ、活用する」という態度を親子で実践することが、これからの情報教育への自然な準備になります。

教員・学校現場が今から取り組むべきこと
情報教育の質は、教える側の準備に大きく左右されます。教員に必要な知識を整理する枠組みとして、技術・教え方・教科内容の知識を組み合わせて考える「TPACK」(Mishra&Koehler, 2006)が知られています。
学校現場が今から着手できる準備として、以下が考えられます。
- 情報教育に関する研修への参加:文部科学省・各都道府県教育委員会が提供するICT活用・プログラミング教育の研修を積極的に受講する
- 現行のプログラミング教育の実践知を蓄積する:2020年度から必修化されているプログラミング教育の実践を記録・共有し、次期学習指導要領の実施後の授業設計に活かす
- CSアンプラグド活動の導入:端末がなくても計算論的思考を育てられる「CSアンプラグド」(コンピュータなしで情報科学を学ぶ手法)は、ICT環境が不均等な現場でも有効な選択肢です
- 校内の情報共有体制の整備:情報教育に詳しい教員が少ない学校では、外部専門家・ICT支援員との連携体制を今から構築しておくことが、新しい内容が始まったときの混乱を防ぎます
よくある質問
Q. 次期学習指導要領はいつから実施されますか?
A. 2026年9月時点では、答申も告示も出ていません。中央教育審議会は2025年9月に論点整理をまとめ、2026年度中の答申を目指して審議を続けています。答申の後に告示と移行期間を経て全面実施となるため、具体的な年度は文部科学省の公式発表で確認してください。
Q. 現行のプログラミング教育とどう違うのですか?
A. 現行(2020年度〜)のプログラミング教育は、算数・理科・総合的な学習の時間など既存の教科に「組み込む」形での実施です。独立した授業時間・評価基準はありません。論点整理では、小学校については総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を加える方向が示されています。独立した教科ではありませんが、情報を活用する力を系統的に学ぶ場を設ける考え方です。
Q. 今の小学生は新しい情報教育を受けられますか?
A. 全面実施の時期によります。2026年現在の小学生が在学中に新しい内容を学ぶかどうかは、告示と移行期間のスケジュール次第です。学校からのお知らせや文部科学省の発表を定期的に確認することをおすすめします。
Q. 家庭でプログラミングを先取りして学ばせる必要はありますか?
A. 必須ではありませんが、Scratchなどの無料ツールを使った体験は、学校での学習理解を助ける効果が期待できます。「先取り」よりも「楽しみながら触れる」という姿勢の方が、長期的な学習意欲の維持には効果的です。
Q. 小学校の「情報の領域」では何を学ぶのですか?
A. 次期改訂の審議では、プログラミング的思考・データの読み方・情報モラル・メディアリテラシー・AIの基礎的な仕組みの理解などが扱われる可能性がありますが、まだ決まっていません。具体的な学習内容・学年別の目標は、正式な指導要領告示後に確定します。現時点では2025年9月の論点整理が参考になります。
まとめ:次期学習指導要領で情報教育はどう変わるか
次期学習指導要領に向けた論点整理では、小学校から高校まで情報教育を系統的に強める方向が示されています。要点を整理します。
- 現行では各教科に組み込まれていた情報活用能力を、小学校では総合的な学習の時間に加える「情報の領域(仮称)」で、中学校では新設の「情報・技術科(仮称)」で系統的に学ぶ方向が検討されています
- 中央教育審議会は2025年9月に論点整理をまとめ、答申に向けて審議を続けており、答申の後に告示・移行期間を経て全面実施へと進む予定です
- 保護者はScratchの体験・情報の真偽確認・データを読む習慣など、家庭でできる土台づくりから始められます
- 教員はTPACKの習得・現行プログラミング教育の実践知の蓄積・研修参加を今から進めることが求められます
制度の変化を待つだけでなく、今から情報活用能力の土台を育てることが、子どもたちのデジタル・AI時代への最善の備えになります。学習内容をしっかり整理したい方は、静かで集中できる環境での自習も選択肢のひとつです。新宿で24時間営業の半個室ブース中心の自習室をお探しであれば、アイデスク新宿自習室(新宿西口駅徒歩3分)もご参照ください。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
最終更新: 2026年9月29日

