授業が終わったあと、ノートを開いても「何が書いてあるのかわからない」——そんな経験は珍しくありません。米国の心理学者 Kiewra(1985)が行った実験では、ノートを取るだけの群と、ノートを取ったうえで後から復習した群とを比較したところ、復習群が最も高い成績を示しました。つまり、ノートは「書くこと」より「後で使えること」のほうが学習成果を左右します。
この記事では、復習しやすいノートの取り方と、ノートを復習に活かす具体的な方法を順に整理します。読み終えたあとには、今日の授業から実践できる具体的な手順が手元に揃います。
この記事のポイント
なぜ「復習しやすいノート」が必要なのか?
ノートを取る目的は、授業内容を記録することだけではありません。後から読み返したときに理解が深まり、記憶が定着することまでを見据えて作るものです。まずその前提を整理します。

書くだけで終わるノートになっていないか
授業中に必死でペンを走らせたにもかかわらず、翌日に読んでも内容が頭に入ってこない——このパターンは、ノートが「記録装置」として機能しているが「学習ツール」として機能していない状態です。
Bui, Myerson & Hale(2013)の研究では、ノートを取る際に要約・精緻化を意識した方略を使うと、逐語的に書き写した場合より後の想起成績が大幅に向上することが示されています。板書を丸写しにするだけでは、情報を処理する深さが浅く、記憶への定着が弱くなります。
「書いた=学んだ」という感覚は、実際の理解とは別物です。ノートを閉じた後に「何が書いてあったか」を言葉にできなければ、そのノートは復習に使えていません。
復習前提のノートが記憶定着を左右する理由
Kiewra(1985)の実験では、3つのグループを比較しています。ノートを取らなかった群、ノートを取ったが復習しなかった群、そしてノートを取ったうえで復習した群です。成績が最も高かったのは3番目のグループでした。
この結果が示すのは、ノートを取る行為そのものよりも、後から復習するための資料として機能するかどうかが学習成果を決めるという点です。つまり、ノートの構成は授業中ではなく「復習時の自分」を想定して設計する必要があります。
復習前提のノートとは、後で読んだときに「何が重要か」「どこがわからなかったか」「全体の流れはどうだったか」がひと目でわかる構成を持つものです。この視点を持つだけで、ノートの取り方は大きく変わります。

復習しやすいノートの基本構成
復習に強いノートには、共通した構造的な特徴があります。余白の使い方、情報の区分け、まとめのスペース——これらを意識するだけで、後から読んだときの理解度が変わります。
余白を意識したページレイアウトの作り方
ページを余白なく埋め尽くすと、後から書き込む場所がなくなります。復習時に気づいたこと、疑問点、関連知識を追記するスペースを最初から確保しておくことが、ノートを「育てる」ための基本です。
具体的には、右端または下部に全体の20〜30%程度の余白を設けます。授業中はメインエリアに記録し、余白は復習時の書き込み専用として使います。この区分けを習慣化するだけで、授業後にノートが「使えるもの」に変わります。
余白があることで、後述するコーネル式のキーワード欄や、赤シートで隠す用の補足書き込みも自然に組み込めます。
日付・タイトル・まとめ欄を必ず設ける
「どの授業のノートか」「何について書いたか」がすぐわかるように、ページ上部に日付と授業タイトルを必ず記入します。これは当然のように思えますが、省略しているノートは復習時に探すのに時間がかかります。
さらに、ページ下部にまとめ欄を設けることを習慣にします。授業後5分以内に「このページで学んだことを3行でまとめる」という作業を行うと、情報の整理と短期記憶への定着が同時に進みます。
まとめ欄は授業中に書く必要はありません。授業が終わったあと、記憶が鮮明なうちに自分の言葉で要約することに意味があります。

コーネル式ノート術の構造と使い方
コーネル式ノート術は、1950年代にコーネル大学のWalter Pauk氏が開発したノートフォーマットで、現在も多くの大学や研究機関で推奨されています。ページを3つのエリアに分割して使います。
| エリア名 | 位置 | 記入タイミング | 記入内容 |
|---|---|---|---|
| ノートエリア | 右側(約70%) | 授業中 | 授業内容・板書・説明のメモ |
| キーワード欄 | 左側(約30%) | 授業後 | 重要語・問い・見出し語 |
| サマリー欄 | 下部(5〜7行分) | 授業後 | そのページ全体の要約(3〜5行) |
復習時は、右側のノートエリアを紙や手で隠し、左側のキーワードだけを見て内容を思い出す練習をします。これが「能動的想起」として機能し、再読するだけの復習より記憶定着が高まります。
授業・講義中はどう書けばいい?
授業中の書き方は、復習時のノートの使いやすさに直結します。「何を書くか」より「何を書かないか」を意識することが、質の高いノートへの近道です。

「全部書こうとしない」ことが重要な理由
授業中にすべての言葉を書き取ろうとすると、情報を処理する余裕がなくなります。Mueller & Oppenheimer(2014)の研究では、ラップトップで逐語的にノートを取った学生は、手書きで要約した学生より概念理解のテスト成績が低かったことが報告されています。
書くスピードが上がるほど、情報を「処理」せずに「転写」するだけになります。手書きの場合も同様で、板書をそのまま写すことに集中すると、先生の説明を聞く余裕がなくなります。
授業中に書くべきは「キーワード」「因果関係」「先生が強調した箇所」の3点です。文章で書かず、断片的なメモで構いません。肉付けは授業後に行います。
キーワードと関係性を図で捉えるメモ術
概念と概念の関係性は、文章よりも図や矢印で表したほうが後から理解しやすくなります。たとえば「原因→結果」「AはBの一種」「AとBは対立する」といった関係を、矢印や囲みで視覚的に記録します。
マインドマップ的な書き方でも構いません。中心に授業のテーマを書き、そこから枝を伸ばして関連概念をつなぐ形です。線形の文章ノートと比べて、全体の構造が一目でわかる利点があります。
図を使う際の注意点は、凡例を決めておくことです。「→は因果関係」「=は同義」「?は要確認」など、自分だけのルールを決めておくと、後から読んだときに混乱しません。
復習時にノートをどう使うか
ノートを取ったあと、どう使うかが学習成果の大半を決めます。再読するだけでは不十分で、能動的に記憶を引き出す練習が必要です。復習のタイミングと方法を具体的に整理します。

24時間以内の見直しで記憶の定着率が変わる
Kiewra(1985)の研究が示すように、ノートを取った後に復習するかどうかで成績に明確な差が生まれます。復習のタイミングとして、授業後24時間以内に一度目の見直しを行うことが推奨されています。これは、記憶が鮮明なうちに整理することで、後の復習効率が上がるためです。
具体的な手順は次の通りです。
- 授業直後(5〜10分):コーネル式のキーワード欄とサマリー欄を埋める。内容の概要を自分の言葉でまとめる
- 当日夜(10〜15分):ノートを読み返し、理解できていない箇所に印をつける。教科書や参考書で補足する
- 翌日(5分):キーワード欄だけを見て、ノートエリアの内容を口頭で再現できるか確認する
この3ステップを習慣化すると、試験前に一からやり直す必要がなくなります。
赤シートや隠し書きで能動的に思い出す練習
Dunlosky et al.(2013)のメタ分析では、「検索練習(テスト効果)」が記憶定着に最も効果量の高い学習方略のひとつとして位置づけられています。ノートを読み返すだけの「再読」は効果量が低く、能動的に思い出す練習のほうが記憶に残ります。
赤シートを使う方法は、その検索練習を手軽に実現する手段です。重要な語句や定義を赤ペンで書いておき、赤シートで隠して「何が書いてあったか」を思い出す練習をします。答えられなかった箇所だけを繰り返すことで、弱点を集中的に補強できます。
隠し書きの工夫として、答えをノートの右端に書き、折り畳んで隠す方法もあります。赤シートが手元にないときでも実践できます。
色ペンや付箋の使い方は正しい?
色ペンや付箋を使いすぎてノートが見づらくなる、という経験は多くの人に心当たりがあるはずです。「カラフルなノート=わかりやすいノート」ではありません。役割を明確にした使い方に絞ることが、復習効率を上げます。

色は2〜3色に絞る:役割を決めた使い方
色が多すぎると、どの色が何を意味するのかわからなくなります。目安は2〜3色で、それぞれに明確な役割を決めます。
色の役割の例(2〜3色ルール)
- 黒(またはシャープペン):授業中のメイン記録・説明・例
- 赤:最重要語・定義・試験に出やすい箇所
- 青(または緑):補足情報・自分の疑問・関連知識
この3色ルールを守ると、ノートを開いたときに「赤を見れば重要箇所がわかる」という構造が生まれます。色を増やしたい誘惑は、ルールを決めることで抑えられます。
また、蛍光ペンで重要箇所をマークする場合も、1色に限定することをお勧めします。2色以上の蛍光ペンを使うと、どちらが「より重要」なのかが曖昧になり、結果的にどこも重要に見えなくなります。
付箋の貼り方で「後で調べる」を見える化する
付箋は「後で調べる」「理解できていない」「試験に出そう」といった情報を一時的にフラグ立てするツールとして使うのが効果的です。ただし、貼りすぎるとノートが付箋だらけになり、どれが重要かわからなくなります。
付箋の色で意味を区分けする方法があります。たとえば「黄:後で調べる」「ピンク:理解不足」「青:試験頻出」のように決めておくと、復習時に優先順位が一目でわかります。
付箋に書く内容は短く。「なぜ?」「定義確認」「例題を探す」のように、次にとるべきアクションを書くと、復習時に迷わず動けます。疑問を解消したら付箋を剥がすことで、「未解決の疑問」が常に見える状態を保てます。

よくある質問
ノートの取り方や復習方法について、よく寄せられる疑問をまとめました。
Q. 手書きとデジタル(タブレット・PC)どちらのノートが効果的ですか?
A. 概念理解を深めたい場合は手書きが有利です。Mueller & Oppenheimer(2014)の研究では、手書きでノートを取った学生はラップトップ使用者より概念理解テストの成績が高く、その理由として「手書きは速度の制約から自然と要約・言い換えが促される」点が挙げられています。
ただし、図表の多い理系科目や、後から編集・検索したい場合はデジタルが便利です。目的と科目に合わせて使い分けるのが現実的です。
Q. コーネル式ノートは慣れるまで時間がかかりますか?
A. 最初の1〜2週間は戸惑うことがありますが、フォーマットを印刷して使うと定着が早まります。授業中はノートエリアだけを使い、キーワード欄とサマリー欄は授業後に埋める、というルールを守れば、授業中の書き方は今と大きく変わりません。慣れるまでは1科目だけで試してみることをお勧めします。

Q. ノートを取らずに授業を聞くだけの方が理解できる気がするのですが、それでも書いたほうがいいですか?
A. 授業内容の理解だけを目的とするなら、聞くことに集中するほうが有効な場合もあります。ただし、Kiewra(1985)が示したように、後から復習するための資料がないと記憶の定着が弱くなります。授業中はキーワードと構造だけを最小限に書き留め、復習時に補足する形が現実的なバランスです。
Q. 復習はどのくらいの頻度で行えばいいですか?
A. 授業後24時間以内に一度目の見直しを行い、その後は間隔を空けながら繰り返すことが効果的です。Dunlosky et al.(2013)のメタ分析では、「分散学習(間隔を空けた反復)」が高い効果量を持つ学習方略として確認されています。具体的には、1日後・3日後・1週間後・1か月後という間隔で復習するスケジュールが参考になります。
Q. ノートをきれいに書こうとすると時間がかかりすぎます。どうすればいいですか?
A. ノートは「きれいに書くもの」ではなく「後で使えるもの」として割り切ることが先決です。授業中は読める程度の字で素早くメモし、清書は不要です。重要なのは構造(余白・キーワード欄・サマリー欄)であって、字の美しさではありません。清書に時間をかけるなら、その時間を検索練習(赤シートでの確認)に使ったほうが記憶定着の観点から効果的です。
まとめ:復習しやすいノートの取り方のポイント
ノートの取り方で変わるのは「記録の質」だけではありません。復習の効率、記憶の定着、そして試験前の準備時間まで変わります。
この記事で紹介した内容を整理します。
- ノートは「書いて終わり」にせず、復習時の自分を想定した構成にする
- 余白・日付・サマリー欄を設け、コーネル式のフォーマットを活用する
- 授業中は全部書こうとせず、キーワードと関係性に絞る
- 授業後24時間以内に一度目の見直しを行い、赤シートで能動的な想起練習をする
- 色は2〜3色に役割を決めて使い、付箋は「未解決の疑問」の見える化に使う
まず今日の授業で、ページ下部にサマリー欄を5行分だけ確保してみてください。授業後にその欄を埋める習慣が身につくと、ノートが「書いたもの」から「使えるもの」に変わります。
集中して復習に取り組める環境について
ノートの取り方と同じくらい、復習する環境も学習成果に影響します。自宅での復習が難しいと感じる場合は、静かな自習スペースを活用する方法もあります。管理人が運営するアイデスク新宿自習室は、新宿西口駅から徒歩3分、24時間365日利用可能な半個室ブース完備の自習室です。深夜の追い込み復習にも対応しています。
※本記事の情報は2026年8月時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
最終更新: 2026年8月26日
参考サイト
- Mueller, P. A., & Oppenheimer, D. M. (2014) — The Pen Is Mightier Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking(Psychological Science)
- Kiewra, K. A. (1985) — Investigating notetaking and review: A depth of processing alternative(Educational Psychologist)
- Dunlosky, J. et al. (2013) — Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques(Psychological Science in the Public Interest)
- Bui, D. C., Myerson, J., & Hale, S. (2013) — Note-taking with computers: Exploring alternative strategies for improved recall(Journal of Educational Psychology)
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