奨学金を借りたとき、「返せるだろう」と思っていた。でも卒業して数年が経ち、毎月の返済額が家計に重くのしかかっている——そんな状況に置かれている方は少なくありません。利息がどのくらい膨らむのか、制度をうまく使えば負担を減らせるのか、そもそも何から手をつければいいのか。
この記事では、奨学金の返済利息と負担を軽減するための制度・方法を、JASSOの公式情報をもとに整理します。読み終えると、自分に使える制度がどれかを判断できるようになります。
この記事のポイント
- 日本の奨学金は貸与型が中心で、第二種(有利子)の利用者が多く、利息負担が返済を重くしている
- 返済が苦しくなったときに使える公的制度(減額返還・猶予・所得連動)がJASSOに用意されている
- 繰り上げ返済・企業の返還支援制度など、制度の外側でも負担を減らせる手段がある
奨学金返済の現状──貸与型が主流で自己返済が前提の制度設計
日本の奨学金制度は「貸与型」が主流です。給付型(返さなくていい奨学金)の拡充が2017年以降進んでいますが、現在返済中の方の多くは貸与型を利用しています。まず制度の全体像を確認しておきましょう。

貸与型が主流で自己返済が前提の制度設計
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金返還ページによると、JASSOが運営する奨学金は「第一種(無利子)」「第二種(有利子)」「給付型」の3種類に大別されます。このうち給付型は2017年度に創設された比較的新しい制度で、対象は住民税非課税世帯等に限られます。
それ以前に大学に入学した世代や、給付型の対象外だった層は、第一種または第二種の貸与型を利用しており、卒業後に全額を自己負担で返済するのが前提の仕組みです。
東京大学の小林雅之氏が行った研究(「日本学生支援機構奨学金の返済困難に関する実証分析」2012年頃)では、日本の奨学金制度が貸与型中心であることと、それが低所得層・非正規雇用者の返済困難に直結している点が指摘されています(詳細はCiNii Research等でご確認ください)。
返済が始まると、月々の支払いは数年〜20年以上にわたって続きます。就職直後の収入が少ない時期に返済が重なることも、負担感を強める一因です。
米国の研究(Walsemann et al., 2015)でも、学生ローン債務の増大はメンタルヘルスの悪化(抑うつ・不安)と有意に関連し、返済期間中の心理的ストレスが顕著であることが報告されており、日本の奨学金返済者が抱える課題と共通する側面があります。
利息付き第二種奨学金の利用者が多い理由
第一種奨学金は無利子ですが、採用基準が厳しく、学力・家計基準の両方を満たす必要があります。一方、第二種は基準が緩やかで月額も幅広く設定されており、より多くの学生が利用しやすい設計になっています。
JASSO統計情報ページでは、毎年の貸与人数・金額の推移が公表されています。統計上、第二種の貸与人数は第一種と比較して多い水準で推移しているとされており、最新の詳細な数値は同ページで直接ご確認ください(年度によって数値は更新されます)。
利息付きで借りた分、返済総額は借入額より大きくなります。この「利息の重さ」こそが、返済負担を考えるうえで最初に把握すべき点です。

利息はどのくらいかかる?第一種・第二種の違いを確認
「利息がある」とわかっていても、実際に何十万円単位で膨らむと知っている人は多くありません。第一種と第二種の違いと、利息の具体的なイメージを整理します。
第一種(無利子)と第二種(有利子)の金利水準
JASSOの奨学金における金利は、貸与終了時に「利率固定方式」か「利率見直し方式」かを選ぶ仕組みです。JASSO公式サイトによると、第二種奨学金の上限金利は年3.0%と定められています。実際の適用金利は貸与終了時の市場金利に応じて決まるため、年度によって異なります。
比較のために表で整理します。
| 項目 | 第一種奨学金 | 第二種奨学金 |
|---|---|---|
| 利子 | 無利子 | 有利子(上限年3.0%/JASSO公式) |
| 採用基準 | 学力・家計ともに厳格 | 第一種より緩やか |
| 月額の目安(大学) | 2〜6.4万円(自宅/自宅外等で異なる) | 2〜12万円(選択制) |
| 返済総額の傾向 | 借入額と同額 | 借入額+利息分が上乗せ |
※月額・金利の詳細はJASSOの公式サイトで最新情報をご確認ください。制度は改定されることがあります。

利息総額のシミュレーション例
たとえば、第二種奨学金を月8万円×48か月(4年間)借りた場合、借入総額は384万円になります。これをJASSOの返還シミュレーターで試算すると、適用金利1.0%・返済期間20年の条件では、利息総額は目安として40万円前後になります。
金利が2.0%に上がれば利息総額は目安として80万円超になるケースもあり、借入額・金利・返済期間の組み合わせによって大きく変わります。
JASSOの公式サイトには返還シミュレーターが用意されており、借入額・金利・返済期間を入力すると月々の返済額と利息総額の目安を計算できます。自分の借入条件を入力して確認することを強くおすすめします。金利が低く見えても、返済期間が長くなるほど利息の累積は大きくなります。
上記の試算値は目安であり、実際の返済額はJASSOのシミュレーター(実施時点の適用金利を入力)で必ず確認してください。
まず利息の重さを把握し、そのうえで次のセクションの制度を使うかどうかを検討するのが、現実的な進め方です。
返済負担を軽減できる公的制度にはどんなものがある?
返済が苦しくなったとき、「延滞するしかない」と思い込んでいる方がいますが、JASSOにはいくつかの公的な救済制度が用意されています。延滞は信用情報に影響するため、まず制度を使うことを検討してください。
減額返還制度──月々の返済額を最大半額に抑える
JASSO公式サイトによると、「減額返還制度」は一定の要件を満たす場合に、月々の返済額を通常の2分の1または3分の1に減額できる制度です。減額した分は返済期間が延長される形になります。
利用できる主な要件は、給与所得者の場合は年収が一定水準以下であること(詳細はJASSOの最新基準を参照)。申請はJASSOのスカラネット・パーソナル(返済者向けオンラインマイページ)から行えます。
注意点は、減額した期間分だけ利息が発生し続けることです。月々の負担は下がりますが、最終的な返済総額は増えます。これは返済期間が延びることで利息の累積額が増加するためです。あくまで「今の家計を守るための一時的な手段」として位置づけるのが現実的です。

返還期限猶予制度──収入が少ない時期の一時停止
「返還期限猶予制度」は、病気・失業・育児・低収入など一定の事情がある場合に、返済を一定期間猶予(一時停止)できる制度です。JASSO公式サイトでは、猶予できる期間の上限や申請方法が詳しく案内されています。
猶予中も利息は発生しますが(第二種の場合)、延滞扱いにはなりません。信用情報を守りながら時間を稼げる点で、失業直後や育休中など収入が一時的に途絶えた状況で有効です。
猶予の申請は原則として期限が迫る前に行う必要があります。「返済できなくなってから」ではなく、「なりそうだと気づいた時点」で動くのが鉄則です。なお、減額返還制度と返還期限猶予制度についてJASSOの公式サイトでは原則として同時利用は案内されていませんが、最新の要件・同時利用の可否はJASSO公式サイトまたはスカラネット・パーソナルで必ずご確認ください。
所得連動返還型への変更という選択肢
JASSOには「所得連動返還型奨学金」という仕組みもあります。これは毎年の所得に応じて返済額が変動する方式で、収入が少ない年は返済額が下がり、収入が増えた年には返済額も上がります。
2017年度以降に採用された給付型奨学金の拡充と同時期に、貸与型でも所得連動型の選択肢が整備されてきました。ただし、変更できるかどうかは借入の種別・時期によって異なります。まずJASSOのスカラネット・パーソナルで自分の状況を確認してください。
Kelchen & Li(2017)の研究では、収入連動型返済プランへの参加者は月次返済額が大幅に低下し財務的ストレスが軽減された一方、長期的な利息総額は増えると報告されています。これは返済期間が延びることで利息の累積が増加するためで、メリットとデメリットの両面を把握したうえで選択することが求められます。
また、金融リテラシーの高さが返済総額の削減に直結するという研究(Lusardi & Mitchell, 2014)は、制度の詳細を理解して選択する重要性を示しています。

繰り上げ返済で利息負担を減らすには?
制度を使って返済を「緩める」方向とは逆に、余裕があるときに早く返してしまう「繰り上げ返済」も、利息負担を減らす有効な手段です。どんな場合に効果的で、何に注意すべきかを整理します。
繰り上げ返済が有効なケースと注意点
繰り上げ返済が効果を発揮するのは、第二種奨学金(有利子)を利用しているケースです。元金を早く減らすほど、その後の利息計算の基準額が下がるため、長期的な支払い総額を抑えられます。
JASSOでは「繰り上げ返還」の手続きをスカラネット・パーソナル(返済者向けオンラインマイページ)から行えます。一部繰り上げ(元金の一部を追加返済)と全額繰り上げ(一括完済)の両方に対応しています。
注意点
- 第一種奨学金(無利子)の場合、繰り上げ返済による利息削減効果はありません
- 繰り上げ返済に充てるお金は、まず生活防衛資金(目安として3〜6か月分の生活費)を確保してから検討する
- 手元資金が薄い状態で繰り上げると、急な出費に対応できなくなるリスクがある

まとまった金額がなくても実践できる「一部繰り上げ」
「繰り上げ返済は大金が必要」と思われがちですが、JASSOの一部繰り上げ返還は少額からでも手続き可能です。たとえばボーナスの一部や、節約で生まれた余剰分を年に1〜2回追加で返済するだけでも、利息の累積を抑える効果があります。
具体的な手順は、スカラネット・パーソナルにログインし「繰り上げ返還」メニューから金額を入力するだけです。難しい手続きは不要。振込先口座への入金で完了します。
利息削減の効果は返済残存期間が長いほど大きくなります。返済開始から数年以内に少額でも繰り上げると、長期的な節約効果が出やすい時期です。
国際的な研究(Looney & Yannelis, 2015)でも、高額の学生ローン債務は住宅購入・結婚・起業などライフイベントの先送りと強く関連することが報告されており、返済を早期に軽減することはライフプラン全体の自由度向上にもつながります。
給付型奨学金・返還免除制度は今からでも使えるか?
「返さなくていい奨学金」や「返済を免除してもらえる制度」は、在学中だけでなく卒業後も一部活用できる場合があります。どんな制度があるか、確認しておきましょう。
特に優れた業績による返還免除の対象と申請方法
第一種奨学金(無利子)には、大学院修了者を対象とした「特に優れた業績による返還免除」制度があります。JASSO公式サイトによると、在学中の研究業績・学業成績が特に優れていると認定された場合、奨学金の全額または半額が免除される仕組みです。
対象は大学院(修士・博士課程)の修了者が中心で、学部生は対象外です。申請は在学中に大学を通じて行い、修了後にJASSOが審査します。すでに卒業・修了している方が後から申請できる制度ではないため、大学院在学中の方は在学中に手続きを確認してください。
学部卒業後の社会人が「今から免除を受ける」手段としては、次の企業・自治体の支援制度のほうが現実的です。

企業・自治体の奨学金返還支援制度を活用する
近年、採用力強化や地方定住促進を目的として、企業や自治体が従業員・移住者の奨学金返済を支援する制度が広がっています。厚生労働省は「奨学金返還支援(代理返還)制度」として、企業が従業員に代わって奨学金を返済した場合に非課税扱いとする仕組みを整備しており、企業側にとっても導入しやすい設計になっています。
自治体の支援制度は都道府県・市区町村によって内容が異なります。地方移住を条件に返済額の一部を補助する制度や、特定の職種(教員・看護師・保育士など)を対象にした免除制度を設けている自治体もあります。
確認すべき制度のチェックリスト
- 勤務先・転職先候補の企業に「奨学金返還支援制度」があるか確認する
- 居住地または移住を検討している自治体の補助制度を調べる
- 看護師・教員・保育士など特定職種向けの免除制度を確認する
- 厚生労働省の「奨学金返還支援(代理返還)制度」の最新情報を確認する(厚生労働省公式サイト)
2021年度の税制改正で企業による代理返還の非課税化が実現しました(厚生労働省)。それ以降、制度を導入する企業が報告されており、導入企業の詳細や最新の要件は厚生労働省の公式サイトでご確認ください(2026年8月時点)。転職活動中の方は、給与水準と並んでこの制度の有無を確認する価値があります。
よくある質問

Q. 減額返還制度と返還期限猶予制度は同時に使えますか?
A. JASSOの公式サイトでは原則として同時利用は案内されておらず、どちらか一方を選ぶ形が基本です。収入がゼロに近い状況なら猶予制度、収入はあるが返済が重い状況なら減額返還制度が向いています。最新の要件・同時利用の可否はJASSOのスカラネット・パーソナル(返済者向けオンラインマイページ)または公式サイトで必ず確認してください。
Q. 延滞してしまった場合、制度を使うことはできますか?
A. 延滞が続いている場合でも、制度の申請自体は可能です。ただし、延滞が長期化すると信用情報機関への登録(いわゆるブラックリスト)につながるリスクがあります。延滞に気づいた時点でJASSOに連絡し、猶予や減額の申請を検討することが先決です。放置するほど選択肢が狭まります。

Q. 繰り上げ返済をすると、毎月の返済額は下がりますか?
A. JASSOの繰り上げ返還は、元金を減らすことで残りの返済期間を短縮する仕組みです。月々の返済額が自動的に下がるわけではなく、返済が終わる時期が早まる形になります。月々の負担を下げたい場合は減額返還制度の利用が適切です。目的に応じて使い分けてください。
Q. 所得連動返還型に変更するとどんなメリット・デメリットがありますか?
A. メリットは、収入が少ない年の返済額が抑えられる点です。Kelchen & Li(2017)の研究でも、月次返済額の低下と財務的ストレスの軽減が確認されています。一方、返済期間が長くなるため利息総額は増えます(返済期間延長による利息累積のため)。収入が安定していて早期完済を目指す場合は、通常の返還方式のほうが総支払額を抑えやすいケースもあります。
Q. 企業の奨学金返還支援制度は、どうやって探せばいいですか?
A. 求人票や企業の採用サイトに記載されているケースが増えています。また、厚生労働省が「奨学金返還支援(代理返還)制度」の関連情報を公表しているため、同省の公式サイトを確認することをおすすめします。転職エージェントに「奨学金返還支援制度がある企業」と条件を伝えて探す方法も有効です。
まとめ──返済と向き合いながら学び続けるために
奨学金の返済負担を軽くするための手段は、大きく3つに整理できます。
- 公的制度を使う:減額返還・猶予・所得連動返還。苦しくなったら延滞の前に申請する
- 繰り上げ返済で利息を削る:第二種(有利子)なら、余裕ができたときに少額でも追加返済する
- 外部の支援制度を探す:企業の代理返還制度・自治体の補助制度を転職・移住の判断材料に加える
返済は長期戦です。「今の自分に使える制度はどれか」を一度JASSOの公式サイトで確認し、スカラネット・パーソナルにログインするところから始めてみてください。
返済期間中にスキルアップや資格取得を並行して進めることで、昇給や転職による収入増につながり、繰り上げ返済の原資を作りやすくなります。学習時間を確保したい方には、集中できる環境を選ぶことも一つの投資です。首都圏で自習スペースをお探しの方には、24時間営業のアイデスク新宿自習室(新宿西口駅徒歩3分)も選択肢のひとつとして参考にしてください。
※本記事の情報は2026年8月時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。制度は頻繁に改定されるため、年度をまたぐ場合は特にJASSOおよび文部科学省・厚生労働省の公式情報を随時参照してください。
最終更新: 2026年8月31日

